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歴史を学ぶことの大切さ

教員コラム
2021.08.24
現代社会学科
中村 克明

 17年ほど前、私は友人に頼まれて沖縄の大学で、司書講習会の講師を務めたことがありました。熱心な方々が多く、あっという間に一週間が経ってしまいました。その最終日のこと、授業終了後、大学の近くのコンビニに立ち寄ったところ、受講生の一人から声をかけられ、何人かと一緒に沖縄の北部に行くことになりました。なにせ初めての沖縄でしたから、見るもの聞くもの、すべてが新鮮でした。特に印象に残っているのが、嘉手納基地の恐ろしい光景とすさまじい轟音、そしてそれとはまったく対照的な万座毛の美しさでした。

 翌日、帰宅するために那覇空港まで友人に車で送ってもらったのですが、この車の中での会話が私に決定的な影響を与えるものとなりました。それは、私が万座毛の話をした時のことです。これを聞いた、友人がぼそっと小さな声で「でもね、あそこで戦争中、米軍に追い詰められて、多くの人たちが崖から身を投げて死んだんだよね」と言ったのです。この一言を聞いた時、私は頭を金槌でぶちのめされたような衝撃を受けました。こんな事実も知らずに、その景色だけを見て感激していた私は自分の愚かさを恥じずにはいられませんでした。

 みなさんは、沖縄に米軍基地の70%が集中していることを知っていますか。沖縄は今でも事実上、アメリカの占領下にあるといっても決して過言ではありません。沖縄は第二次大戦中、“この世の地獄”と呼ばれた大戦闘に巻き込まれました。10万人を超える人々が犠牲となりました。まさに凄まじい戦いが展開されたのです。そして、自国の軍隊が最も危険だということを知りました。昭和を代表する作家・司馬遼太郎も次のように言っています。‟軍隊は、軍隊を守るのであって、住民を守るのではない„と。

 アメリカ軍による事実上の軍事占領がなぜずっと続いているのかも、考えなければいけないでしょう。沖縄の現状は、決して他人事ではありません。もう亡くなりましたが、沖縄の自治権獲得と米軍基地撤廃のために立ち上がった人々の中に瀬長亀次郎さんがいました。瀬長さんは、長年、衆議院議員として沖縄のために一身を捧げた人でしたから、党派に関係なく、絶大な人気がありました。彼は、一度選挙で落選の危機に晒されたことがありました。この時、NHKのアナウンサーが「瀬長さん苦戦です」と絶叫したのを覚えています。結局、瀬長さんは最下位ながら当選を果たし、次の選挙ではトップ当選でした。しかしこの時ばかりは、中立をモットーとするNHKのアナウンサーも、沖縄の英雄の危機に思わず声を出さずにはいられなかったのでしょう。

 今の国会議員やテレビに出ている薄っぺらなコメンテーターたちはもとより、多くの若い人たちも沖縄の歴史をはじめ、日本の近現代史にはあまり興味がなさそうに見えます。でも、自国の歴史を知りもせずに、ヨーロッパのサッカーチームのことばかり知っていても仕方がないでしょう。私の敬愛する故戸田三三冬先生は、なにをやるにしても、「歴史が一番大切なのです」と教えてくださいました。まったくそのとおりだと思います。私たちは日本の近現代史について、特に戦争の歴史について、それがどのようなものであったかを真剣に学ばなければなりません(ちなみに、私は日本近現代史も担当しています)。すべての事柄は、“歴史”から始まるのですから。

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