先日、12年前に卒業したゼミ生から突然に連絡がありました。「(2021年)4月から中学校の先生です!34歳で新米教師になります」と言うのです。
連絡をくれた谷口君は2008年度の卒業生で、大学時代は陸上競技部に所属していました。途中で怪我もありなかなか思うような成績を残せず、苦しんでいたことを覚えています。それでも、彼はゼミ長として明るく朗らかに振る舞い、また、人懐っこくみんなから慕われていました。
彼は、大手食品メーカーの営業マンとして活躍していたはずです。最初の赴任地である香川県で結婚し、2人の子どもを授かっています。また、数年前には東京本社に栄転し、出世コースを歩んでいるものと思っていました。
びっくりして彼に会いに行き「なぜ今更、教員に?」と尋ねました。そうすると、彼は次のように語りだしたのです。
香川県に赴任したのち、休日に近所の公園でジョギングしたり陸上競技場でトレーニングをしたりしながら、市民ランナーとして頑張っていました。それを続けているうちに、何人かのジョギング仲間ができ、その中に小中学生がいました。出会うごとに、子どもたちに走り方の基礎などをボランティアで教えていたのです。そのうちに「自分の知っていることを伝えるって面白いなぁ」と思い始めました。ふと、大学時代の教職課程を思い出し、教員免許状を活かせるのではないか!と、教師への道を模索し始めました。
この計画を奥さんに告げると「何バカなこと言ってるの!」と鼻であしらわれたと言います。しかし、諦めの悪い彼は「いやぁ、今日も残業で…」と嘘をつき、教員採用試験対策の予備校に通い始めたそうです。6年間教員採用試験を受け続け、2021年度の教員採用試験(1次試験)にやっと合格することができました。その通知を最大の壁の奥さんに見せたところ、「ホント仕方ないわね~、地元の香川だったら…」と奥さんから譲歩を引き出すことに成功したのです。そこからは、毎晩、2次試験対策のために、奥さんは面接官役、子どもたちは生徒役となり、家族総出で面接や模擬授業の練習を行って本番に備え、見事合格したというのです。
「ようやく夢が叶います」と谷口君は本当に嬉しそうに話していました。
熱い想いと見事な戦略によって教師へと人生の舵を切ったこと、そして、その思い切りの良さに感服しました。おそらく、生徒を大切に思う素晴らしい先生になってくれることでしょう。そして、数年後にはどんな先生になったのか、もはや彼と再会する日が楽しみになっています。
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