本学には、基礎ゼミナールという授業があります。1年生の必修科目です。1冊の本をゼミ生みなで読みます。今年の春学期は、筒井 淳也著『仕事と家族 – 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか 』を取り上げました。
ゼミのやり方は、ゼミ生一人ひとりが、毎回少しずつ、決められた箇所について何が書いてあるのか、レジュメを作成して報告した上で、その部分にかんする自分なりの疑問や感想、意見を発表します。
それを聞いている残りのゼミ生も、事前にその決められた箇所について読んできて、わからない点を報告者に質問
をしたり、報告者の疑問や意見に対して自分なりの答えや意見を披露してもらいます。
こうした方法で、本の読み方、レジュメ作成の方法、報告や質疑応答の仕方など、大学での学びの基礎的な方法を一通り学んでもらいます。
しかし、ほとんどすべての1年生が、高校卒業まで、こうしたゼミという授業形式を経験したことがないため、当初はみな戸惑います。そこでレジュメ作成の方法については、先輩たちのレジュメのなかから優れたものをサンプルとして紹介したり、本の最初の部分について、こちらでレジュメの見本を作成し、それを見せるなどしています。
また最初のうちは、司会の学生が「今の報告についてなんでもよいので質問をしてください。」と言っても、「シーン」という状態が続きます。それで、こちらのほうから、「質問するのは、報告者に対する礼儀です。隣同士で話し合って、なんとか質問をひねり出してください。」と伝え、3分とか5分の時間を与えます。そうすると、簡単なものからむずかしいものまで、けっこういろいろな質問がでてきます。それらについて、なんとか応えるよう、報告者には頑張ってもらいますが、答えられないものや不足する部分については、こちらのほうで補足的に説明します。
質疑応答と補足説明を通して、本の内容をより深く理解することができ、関連する社会学の概念や理論に触れることができます。そのため、必ず質問をしてもらうのです。
こういうことをやっていくうちに、徐々にレジュメの作り方がうまくなり、「いい質問だね」と言えるものがでてくるようになってきます。そして、ゼミの最後に課題として書いてもらうゼミレポートも、それほど苦労しなくても書けるようになる学生が多くなります。欠席が目立った学生と、ほとんど、あるいは、まったく欠席しなかった学生とでは、ゼミレポートの質で開きがでます。
ゼミレポートについては、自分でテーマを選び、それについて関連する論文を読んだり資料を使って、文章を筋道立てて書いていく、という作業に重きを置いています。ですから、特に質の高さを求めているわけではありませんが、ときどき、「あら!」という軽い驚きをもたらしてくれる作品に出会うことがあります。そうした体験は嬉しいものです。
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1年生の基礎ゼミナール
教員コラム
2017.10.13