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リスクに対する心理特性

産業界から地域社会へ
『未然防止』のあり方を模索する
HOSODA SATOSHI
細田 聡
担当科目
心理学、社会心理学、リスクと社会、教育心理学 他
今、もっとも関心がある研究テーマは?
『間違える』とは何か?事故原因の上流を探ります
産業現場で発生した事故を対象に調査研究をしています。民間の研究所に勤めていた頃から、永年に渡り様々な産業事故を見てきました。例えば、製造現場でコンベアに巻き込まれた労働災害や、化学プラントでボタンを押し間違えて機械が暴走したといったシステム事故です。こういった事例の原因を追究し、対策の提案をしています。産業事故には人間がかかわっていますから、心理学の側面からのアプローチが私の仕事です。大学院のときに、「人間が記憶したり忘れたりするメカニズムとはなんだろう」、「間違った反応ってあるのかな?実験者側が分けているだけじゃないか?」、「そもそも、間違いとは何だろう」とか考えていました。就職した研究所では、産業現場で発生する多様な課題に取り組んでいました。その中の一つが『ヒューマンエラー』。当の本人は、正しいと思いながら操作したのに、結果として悪いことが発生することがあります。以前は、操作者のヒューマンエラーが事故原因とされていました。今では、ヒューマンエラーは事故の原因ではなく結果であり、逆に、人間は事故を防止する最後の砦(とりで)と考えられています。事故原因はもっと上流にあり、それが改善されないと事故を防ぐことはできません。その上流にあるのが組織の安全マネジメントです。このマネジメントの構造や機能を詳しく理解する必要があるのです。
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その研究における醍醐味や、やりがいは?
懇切丁寧な説明により調査現場との信頼関係を築く
産業現場での事故調査の際には何度も面接調査を行います。本人、同僚、上司、管理者と、それぞれの話を聞いて、ときには、私自身の考えを投げかけます。面接によって、安全のみならず業務自体についての管理側と現場の意見の食い違いも明らかになります。この食い違いについて、会社側と何度も話し合いを持ちます。こうすることで、現場が抱える課題や苦悩を管理者が理解して、管理者と現場サイドの話し合いへ持ち込むことができたときは、やりがいを感じますね。
ある調査で、発注会社(親会社)、受注会社(元受け)、協力会社(一次下請け、二次下請け…)などと、産業構造がいく層にも重なる現場がありました。当初、1時間半の面接中に、ひと言もしゃべらない下請けの親方がいました。何回も通って、やっとぽつぽつ話すようになるといった、5年ぐらいかかった調査でした。会社での調査報告会が終わった後、休憩室にいたら、たまたまその親方が通りかかったんです。すると、5年前ひと言もしゃべってくれなかった親方が、自販機で缶コーヒーを買って、そのまま通り過ぎるのかと思ったら、ひょいっと僕にくれたんです。あれほど美味しい缶コーヒーはなかったですね。
大学では「リスクと社会」の授業で産業事故の事例を紹介しています。内部告発の話など、将来、会社に入って不正を目の当たりしたときに、自分ならどう行動する?といった問いかけを学生にしています。内部告発は自分の生活もリスクにさらすので、個人リスクと社会リスクのバランスのとり方が重要です。社会での事象のとらえ方の勉強になると思います。また、『安全文化評価ツール』の開発にも力を入れています。安全文化を視覚化する試みですが、上司と部下がお互いを評価し合う工程を経るため、開発当初はどこも受け入れてくれるところがなくて困りました。しかし、データ数が増えていくと、その効果が認められて、今では約5万データを蓄積するまでに成長しました。
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ご自身の研究領域で、どのように社会をデザインしますか?
産業界から地域社会へ『未然防止』のあり方を模索する
日本の産業界は、30代、40代の人材難により、管理者の年齢が10歳くらい若くなり、現場のことをまだよく知らない40代が管理運営する立場にいます。そのため、ルールや規則を作って管理し、事故が起こるとさらに多くのルールを作って管理を厳しくしています。ルールは、作れば作るほど、人はそれを見なくなるという習性があります。また、ルール通りやっていればいいという考えや、新しいやり方を研鑽して探すことをしなくなり、臆病な現場になりがちです。産業界は、ルールを棚卸しして、これは絶対守る、ここは自分で考えても大丈夫という振り分けが必要だと思います。オーストラリアのカンタス航空は重大事故を起こしたことがないので有名ですが、整備士にマニュアルについて聞いたところ、「マニュアルなんて無い。整備士なら、メンテ内容は自ずと分かるから」という驚愕の返答が返ってきました。規則がなくてもやるべきことがわかっていて重大な事故が起こらない、そんな社会をつくっていきたいと思っています。
ある会社で、安全プロジェクト委員会を立ち上げたときのことです。親会社から下請けまで、すべての階層の人が参加して、自由に発言する会議を設けたのですが、発言するのは親会社ばかりでした。そこで、年齢ごとに分けて会議を仕切り直したところ、若い世代の会議で、足のくるぶしまでの短ソックスをはいている親会社の若者に、下請けの若者から「足首を保護する靴下じゃないと危ないですよ。気づいていたけど、親会社だから言えなかった」と。会議で知り合いになり、立場と関係なく、さまざまなことを話せるようになっていきました。
最近では、大学の先生方とプロジェクトを立ち上げて、大学近隣の地域防災にも力を入れています。この地域は住人の70%が65歳以上という、いわば『都市型限界集落』。いざというときの潜在的なリスクを洗い出し、未然防止のために大地震などが起こった際の対策MAPを制作して、だれ一人取り残さない防災を考えています。
学生へのメッセージとしては、たとえ雪が降り積もっても折れない竹のように、パンッと弾いて、また立ち上がる。時には頭を下げて、たわむこともあるかもしれませんが、凝り固まらず、しなやかに生きていって欲しいと思います。
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