入学者選抜情報
ホーム > 地域社会と国際社会

地域社会と国際社会

社会を絶えず知りなおし、
多様性に開かれた公正な社会を創造する
FUJINAMI KAI
藤浪 海
担当科目
アジアの社会、地域の社会計画、地域社会の質的研究 他
今、もっとも関心がある研究テーマは?
時代も国境も越えて受け継がれる沖縄アイデンティティとネットワーク
沖縄に、「世界のウチナーンチュ大会」という、大変盛り上がるお祭りがあるのをご存じですか?沖縄は、たくさんの移民を世界中に送り出してきた歴史をもっています。そしてその移民たちはその移住先でさまざまな形で活躍しており、なかにはハワイで州知事をされた方もいるくらいです。そうした沖縄につながりをもつ世界中の人々がおよそ5年に一度、沖縄に大集結するのが、この「世界のウチナーンチュ大会」です。1990年にはじまり、2022年までに7回開催されており、2016年の第6回大会には約7,000人もの人々が海外から集まりました。
私がこの「世界のウチナーンチュ大会」に出会ったのは2011年、大学のゼミで行ったフィールドワークでした。この大会の参加者にアンケートをしたり活動の参与観察をしたりするなかで、驚いたことがあります。それは移民たちが世代を経ても沖縄を愛し続ける気持ちをもっていたこと、そしてたくさんの沖縄の人々が「おかえり!」と声をかけながら熱烈に出迎えていたことです。時を越えて、そして国境さえも越えて、受け継がれていくこの沖縄アイデンティティとネットワークは一体なんなのだろう――調査をすればするほど、疑問がわいてきました。
この疑問を携えながら神奈川に戻ってくると、実は自分の地元にも沖縄ルーツの人々が多く暮らす地域があることに気が付きました。しかもその地域は南米の沖縄コミュニティともつながりあい、多くの南米出身者を受け入れてきた街でもありました。沖縄の人々の国境をこえたネットワークが実は自分の地元をも巻き込んで広がっている――そのことに気が付いたときに、沖縄と自分自身がつながったような気がして、いつの間にか、国境も時も越えて受け継がれていく沖縄アイデンティティやネットワークを研究テーマとするようになっていました。
もっと見る
その研究における醍醐味や、やりがいは?
沖縄移民を考えるということは、自分のあり方を問い直すということ
沖縄移民を考えることは、自分のあり方を問い直すことだと思っています。そもそも「世界のウチナーンチュ大会」をなぜ行うようになったのかを考えてみましょう。実はこの背景には、1972年の本土「復帰」のあと、沖縄の人々が抱えてきた日本への劣等感があったといわれています。日本に追いつこうとすればするほど、「遅れた」沖縄を否定することになり、沖縄人としての自信が揺らいでいってしまう――そのなかで目を向けるようになったのが、世界中の沖縄ルーツの人々でした。世界をまたにかけ活躍するかれらのなかに、沖縄人としての国際性や開放性を見出し、自信を取り戻していこう――「世界のウチナーンチュ大会」は、このような想いから開催されるようになったそうです。
このことを知ったとき、沖縄からの移民を考えるということは、沖縄と日本の関係を考えるということでもあるのだと感じました。考えてみれば、そもそも沖縄からなぜたくさんの移民が送り出されてきたのかという歴史にも、そして神奈川に暮らす沖縄ルーツの人々、その一人一人の経験のなかにも、そうした沖縄と日本の関係性が反映されていました。私は本土に暮らす人間として、沖縄に対しどのように向き合ってきたのだろうか――沖縄移民を考える中で、それまで沖縄のことをどこか遠い地域の問題だと考えていた自分のあり方を厳しく問われた気持ちになりました。
沖縄のことは沖縄の人がやればいいという意見もあるかもしれません。でも私は、本土に暮らす人間として、きちんと沖縄に向き合っていく必要があると思っています。沖縄の人々の声にしっかり耳を傾け、本土に暮らす人々自身が変わっていくことによってはじめて、沖縄と日本の公正な関係性を築いていくことができるのではないでしょうか。
もっと見る
ご自身の研究領域で、どのように社会をデザインしますか?
他者を通して社会を絶えず知りなおし、多様性に開かれた公正な社会を創造する
私が社会のあり方を考えるときに大切にしているのは、他者、とりわけ社会的に弱い立場の人々の生きる世界を知ることです。今まで自分が当たり前に過ごしていた社会が、他者にとっていかに問題含みの社会であったかを知ることにつながるからです。そしてそこから、多様性に開かれた公正な社会を考えるきっかけが生まれます。私にとっては、沖縄をはじめとして、アイヌや在日、そしてニューカマーとよばれる移民など、日本に暮らすエスニック・マイノリティがその重要な他者となり、かれらの視点を通して社会のあり方を問い直してきました。
私たちが暮らしている社会には、階層や職業、ジェンダー/セクシュアリティ、人種/民族、アビリティ、年齢などをめぐって、実に多様な人々が暮らしています。今までそういった人のことを考える時間を持つ機会はなかったかもしれませんが、「自分のまわりには、どういう人がいるのだろう」と、ときおり、立ち止まって考えてみましょう。電車やバスのなか、駅や大学、コンビニ、あるいは道端でも結構です。身近に暮らす、多様な他者の存在に目を凝らしてみましょう。そうした他者が生きている世界を想像してみることは、自分とは異なる視点から社会を「知りなおす」ことにつながります。
社会をデザインするためにまず必要なのは、そうして他者を通して社会を絶えず「知りなおす」ことです。それを通してこそ、自らの立場を客観的にとらえなおし、そして多様性に開かれた公正な社会を創造し続けていくことが可能になります。社会をデザインすることに終わりはありません。皆さんが大学生活を通して、何度でも社会を知りなおし、いくつものオルタナティブな社会の可能性を切り拓いていってくれることを願っています。
もっと見る

ADMISSION

入学者選抜情報
関東学院大学では、受験生一人ひとりが実力を発揮できるように、
多彩な選抜試験制度を用意しています。
下記から受験方式、日程、受験可能な学科などを絞り込んで、あなたに最適な受験方法を探してみてください。