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若い人たちの貧困問題~カナダ・トロント市から

教員コラム
2014.12.12
現代社会学科
澁谷 昌史

 カナダで最大の若者(16~24歳)用のシェルター(緊急避難施設)であるコベナントハウスによれば、トロント市には年間10,000人のホームレスの若者がいて、毎日2,000人が夜を戸外で過ごしているといいます。
 
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※街の中心部に位置するコベナントハウスの外観。
 
 コベナントハウスによれば、ホームレスの若者のうち、70%が実家で何らかの虐待を受けてきたといいます。安全・安心のない家庭にとどまる理由はないですから、若者たちが中学卒業後にまもなくしてホームレス生活に入ることも、よくある話です(ちなみに15歳より前に実家で暮らすことを拒否するなら、トロント市の場合、CASという機関が関与して、公的な保護の開始が検討されます)。家庭・学校における多様な経験不足は、仕事探しにも大きな影を落とします。家と仕事を探すことは、ホームレスの若者支援の大きな柱です。
 
14教員コラム写真2(400)
※若者たちの中には、アートにたぐいまれな才能を示す場合も珍しくない。
 こうした作品は、どのユース・シェルターでも見られる。
 
 日本でも若いホームレスが増えているといいます。働き続けていけなくなるような劣悪な雇用環境を見直すことも大事ですが、本当に困ったときに家族や地域に居場所がないという問題についても、あわせて考えていかなければなりません。
 
 ホームレスの若者たちが子ども時代に頼れる人がいなくて本当に困っていたとき、いったい私たちの社会は何をしてきたのでしょうか。「子育ては家庭で責任を持つべき」という原則を否定するわけではありません。ただ、社会が連帯し、子どもの育ち・育てを日頃からサポートすることのできる社会を軽んじることになれば、若年層ホームレスという現象は、もっともっと広がっていくでしょう。
 
 「社会福祉」というと「困っている人を助けること」に関心が向きがちですが、実態を示すデータを集めて、社会や行政に働きかけることも大きな課題です。社会学部はそのための学びの機会も提供します。
 
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※「家のないユース」という名前のシェルターの報告書の一部。「圧倒されるような世界を乗り越える」というタイトルで、公共交通機関を利用することすら困難な生活を乗り越えていこうとするユースの姿が、実際の事例とともに紹介されている。
 
 
 
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