だんだん英語が嫌いになっていく
本社会学部に入学してくる学生の多くに共通する“嫌いなもの”、それは英語です。ご存じのように、英語の学習は中学1年から始まります(2020年以降は小学3年生から)。しかしながら、当初こそ、それなりの興味をもっていたのに、次第に英語が「嫌」になってくる。これが高校ともなるとさらに「とっても嫌なもの」へと重症化。その一方で、社会科などは結構楽しく学べたりする……。でも、なぜ英語ばかりが嫌いになってしまったんでしょう?
英語はまず基本単語と文法を学び、これを使えるように覚えていくことで次第にスキルレベルがアップする。つまり「積み上げ方式」なので、基本=土台をいかに確実に覚え、そしてこれを運用できるかで上達が決まります。でも、ここをおろそかにすると学んだものが”砂上の楼閣”になって、いくら学んでもレベルがアップしない。その一方で、学習のカリキュラムは次第に難しくなっていく……。こうなると費用対効果が感じられなくなり、やりがいも失なわれていく。でも、やらなきゃならない。その結果、英語はとっても嫌なものへと転じていくのです。つまり“やらされ感100%“(同様の科目に数学があります)。
でも、これって、本当に英語のことが嫌いなんでしょうか。
なぜか、タイ語なら大丈夫
夏になると私は学生たちをタイにフィールドワークに連れて行っているのですが、その際、事前にタイ語のいくつかを学習してもらっています。挨拶、交通機関の利用法、タイ料理のメニュー、ショッピングの方法(値切り方など)、トイレの尋ね方……覚えてもらう単語は100もありません。しかも、ほとんど単語だけ。
学生たちはこれを現地で使い始めます。すると、最初こそおっかなびっくりという感じなのですが、次第に使うのが楽しくなってきます。たとえば普通の観光客が知らないタイ料理を、覚えた単語をつなぎ合わせていろいろと注文しはじめるのです。こうなるとグッと手応えを感じ面白くなってくるので、さながら言葉を覚えたての幼児のように、矢鱈と使いまくるようになるのです。費用対効果は大であること実感するわけですね。
帰国後、学生の一人が私にこんなことをこぼしました。
「先生、タイ語ってゲームみたいで本当におもしろいですよね。英語とは全然違う!」
いや、それはちょっと。
タイ語も英語も外国語という点では同じ。単語があって文法がある。だからこの二つで好き嫌いが別れるなんておかしいのです。そもそも、語学を覚えることは異なる文化の人とコミュニケーションができるようになること。楽しくないはずがありません。実はこの時、学生たちはタイ語を「勉強」ではなく「遊び」として学んでいたのです。
学生たちが英語嫌いな理由は「英語にまつわる過去の忌まわしい経験」がトラウマとしてまとわりついているから。つまり嫌いなのは英語ではなく、こちらの方(一方、社会科にはトラウマがないから純粋に楽しめる)。ということは、このトラウマさえなければ英語も楽しいもの=遊びになるはず。
学びを遊びに変えよう!
さて、大学に入学すると、高校生活同様、勉強があなたを待っています。ということは、英語ほどではありませんが、やりたくもない授業に出席し、テストで及第点をとる生活を四年間さらに続けさせられることになる?
でも、もし大学での勉強が私の学生たちがタイでタイ語を使ってみるようなものであったら、あるいは科目が全部ゲームだったら……これは楽しいですよね。
そこで、大学生活で皆さんにおねがいしたいことがあります。それは、ここで例にあげた学生にとってのタイ語であったり、あるいはゲームであったりするようなものを見つけること。つまり、「まなび」を遊びやゲームのように純粋に楽しんで欲しいのです。
そこで、まずは大学の勉強(講義やゼミ)の中からと言ってはおきますが、取り組むもの、実は部・サークル活動、バイト、恋愛、趣味……なんであってもかまいません。これらは、すべて学びの一つ。そうして学びと遊びを同じものとしてマインドセットできたとき、きっとあなたの前には学びの中に「新しい景色」が見えているはずです。
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