私の授業(教育社会学)では、毎回ミニレポートの提出を課題としています。A4一枚の用紙に、「学んだこと・考えたこと」「感想・要望・質問」を自由に記述する形式です。学生の声を聞く双方向の教育活動、コミュニケーション・ペーパーとして活用し、次の授業の冒頭で読み上げて、復習にも役立てています。次に挙げるのはそのうちのいくつかですが、大学を取り巻く環境は変わっても、意欲的に楽しく勉強している大学生は健在です。
・「今日の自分は、昨日までの自分の結果である。」心に響きました。大学生活も残り1年なので、今しか勉強できる機会はないと思うので、「本気」で取り組みたいと思います。(比較文化学科、4年生)
・90分間でこんなに学ぶこと、新しく知ったことが多い授業は久しぶりでした。就活を目前に控えて、未だやりたいことが見つからない私ですが、せっかく大学に通わせてもらっているので、学べることは最大限、吸収していきたいと思います。(現代社会学科、3年生)
・私も「ピカルの定理」好きなのでよく見てるんですが、「ゆとり教育世代戦隊」?みたいなやつは自分はあそこまでひどくはないだろうなと思って見てます。でもゆとり世代はあんな風に見られてるのかなと思いました...。あと、先生の脱線する話、面白くてすきです!(現代社会学科、4年生)
・今まで自分が知らなくて生きてきたことを沢山知ることができました。そのことによって、知らない世界を見れて見方が変わりました。ありがとうございました。(現代社会学科、4年生)
・自動車免許取得のため休んでしまい、先生の授業を全て受けることができず悔い が残りましたが、この授業を受講して良かったと思います。社会人になり、子どもがうまれてからも生かしていける授業でした。ありがとうございました!!!(現代社会学科、4年生)
さて、関東学院大学では、FD(ファカルティ・ディベロップメント:大学の授業改善、教授団の能力開発)の一環として、公開授業を実施しています。現行方式となった2011年度からこれまでに、教職員14人が私の授業の参観に訪れました。他学科の先生方、学部次長や教務課の方々、金沢八景キャンパスからも参観者が来てくれて、勉強になったと言ってくださるのは光栄の至りです。
・今日は公開授業で先生も緊張されていたかと思いますが、それを気付かせない素敵な授業でした。ありがとうございました&お疲れさまでした!(現代社会学科、4年生)
折から、大学教育の質の保証が政策課題となり、大学教員の授業内容や研究業績の公開が義務づけられています。適切な内容を講義しているのか、授業を行う資格があるかが問われる時代です。その評価基準として、論文の被引用回数が定着しつつあります。ありがたいことに、以前学会誌に発表した論文が、同誌で11本の論文に引用され、他多数の著書・論文で取り上げていただきました。社会的関心の高い教育格差研究や高等教育研究の最前線に貢献することができたのは、嬉しい限りです。
ところで、私の研究テーマは「教育と社会的不平等」です。研究者たちの尽力もあって、最近では機会均等と再配分に対する理解が広まってきているように思われます。2014年度から、高校生を対象として給付型奨学金がスタートすることになりました。返済義務の無い奨学金は、最も効果的な教育機会均等化策と考えられており、多くの先進国で実施されています。財源は高校無償化制度に所得制限を設けて確保しました。子ども手当て同様、所得制限の無い同制度については、複数の世論調査において反対意見が多数であることが明らかにされています。日本国民は賢明です。東京都は、2008年度から受験生チャレンジ支援貸付事業をスタートさせています。これは、低所得世帯の中高生に学習塾費と受験料を支援し、高校および大学進学の際に返済が免除されるというものです。東京は日本を牽引する首都自治体だけのことはあります。このように、機会均等と再配分の政策が少しずつですが着実に導入されており、成熟した豊かな社会の方向性が示されているのだと思います。皆平等のように思うことができた戦後の日本も良かったのかもしれませんが、みなさんは、これからの日本について考えてほしいですね。