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地域とともに、東京スカイツリーは今

教員コラム
2012.03.09
現代社会学科
高橋 美恵子

2012年5月22日、私が住む街に建設中の、下町(日本)のランドマーク「東京スカイツリー」がオープンする予定である。藍染職人の技法に倣ったと言われる「スカイツリーホワイト」(藍白・あいじろ)を纏った優美な姿が、想像した以上の存在感を見せている。

着工以来、634(武蔵)メートルを目指し少しずつ背を伸ばしてきたスカイツリーを、地元の人は、わが子の成長を見守るようなまなざしで見つめてきた。けれどもスカイツリーも今や、周囲に「やさしさ」や「安心感」を与える存在にまで、成長しているように見える。

 

 

そもそも電波塔として建設された<構造物>に、「やさしさ」を感じるとはどういうことなのか。ひとの成長に関わる「教育学」を専門とする私は、興味をかき立てられている。そして、やさしさを生み出す基にあるのは、「共生への願い」なのではと思っている。

昨年の3月11日、日本はM 9.0の大地震に見舞われた。とくに東北地方と太平洋沿岸部の被害は甚大かつ苛酷なもので、言葉を失うほどの惨状は、復興への覚悟を迫るものがある。この時、建設中のスカイツリーも激震に襲われた。地震によって、折れたり崩れたりすることはなかったが、直後はまるで呼吸が止まったように、ぽつんと佇んでいた(写真左)。

 

 

やがて首都圏では帰宅難民の大移動が始まった。この街でも、自分の足をたよりに北に向かう人々が歩道を埋めた。その暗闇の中、スカイツリーに灯がともった(写真右)。点検のためであろうか工事用の照明が点灯され、文字通り帰宅難民のランドマークとなっていた。

同じころ、近くの区立小学校では緊急避難場所を開設し地域住民への支援を開始した。教室の照明が灯され、この灯は一晩中煌々と闇を照らしていた(右写真手前の鉄筋の建物)。この小学校の創立は1879(明治12)年10月、教職課程で学ぶ1872(明治5)年9月の「学制」頒布から7年あまり、地元の2つの私立学校が統合され発足した130年以上の歴史を刻む公立小学校である。

この地は、14万人以上の命が失われた1923(大正12)年9月1日の関東大震災、12万人が焼死した1945(昭和20)年3月9日深夜の東京大空襲の被災地でもある。度重なる悲劇を教訓として刻む小学校の震災支援への素早さと、スカイツリーの危機管理の確かさに「安心感」や「やさしさ」を感じたのは、私だけではないであろう。スカイツリーはその後、高所で作業をしていた作業員も全員無事で、落下した工具や部品もなかったと発表した。

 

 

 

スカイツリーは開設に向け、周囲にメッセージを発し続けている。上の写真はクリスマスの3日間、試験的にライトアップされたスカイツリーである。大晦日にも同じ「むらさき」を基調としたライトアップがなされていた。私はこの光に、鎮魂と未来への力強さを感じた。

東日本大震災以降、「釜石の軌跡」が防災教育の基本となりつつある。一人ひとりがみずから判断し行動することは、教育に求められる基本的な力でもある。そしてまた、ここに新たな歴史が始まる。安心感とやさしさのある街づくりが、さらに多くの知恵と力を結集していって欲しい。


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