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その人らしく生きることを支援する

教員コラム
2015.06.12
現代社会学科
麦倉 泰子

 先日、私が担当する「障害と社会」という講義で、横浜市内のグループホームで生活されている当事者の方をゲスト講師としてお招きしました。少人数での暮らしを基本とするグループホームでは、一人一人の希望を実現し、その人らしく暮らしていくための支援が行われています。当事者の方たちは、グループホームでの生活によって変化した自分の内面についてじっくり語ってくださいました。スタッフの方たちの言葉からも、日々の暮らしを支える熱い思いが伝わってきました。
 
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 国連では「障害者の権利に関する条約」が2006年に採択されました。日本政府も2014年にこの条約を批准しています。この条約は、あらゆる障害のある人に対する差別的な扱いを禁止し、教育や労働、政治活動などのあらゆる領域への障害のある人の平等な参加を権利として定めるものです。私たちの社会は残念なことに、これまで障害のある人たちを社会の中から排除し、障害のない人たちの都合に合わせてさまざまな仕組みや決まり事が形づくられてきたという側面があります。これを是正し、あらゆる人が社会の成員として認められる社会を構築していこうとするのがこの条約の趣旨です。障害のある人たちが、どこに住むか、誰と生活するのかを自分で決定すること、入所施設などの特定の生活施設で暮らすことを強制されないこともここに含まれます(第19条)。地域社会の中での生活が権利として明言されなければならないのは、障害があるということを理由として、自分の意思に反して入所型の施設での生活を余儀なくされてきた歴史があるからです。このような歴史的な観点に立つと、地域の中で自分らしく生活ができることがいかに価値があることなのかが理解できます。
 
写真2(400)
 
 権利条約のなかで重要な考え方として提示されているのが「合理的配慮」です。「合理的配慮」は建物内の段差をなくすことや公共交通機関のアクセシビリティを確保すること、情報の伝達など、物理的側面に目が向きがちです。しかし知的障害や精神障害のある人など、日常生活場面において物事を決める際に他の人からの手助けを必要とする人たちに対する「意思決定支援」と呼ばれる支援も同時に重要であることが最近になって認識されるようになってきました。ゲストの方のお話からは、グループホームでの暮らしを始めるようになって、さまざまな新しい経験を重ねることによって、それまでになかった「やってみたいこと」が自分の中に生まれてきたことがうかがわれました。このような「意思決定支援」の取り組みをどのように具体的に進めていくかもこれからの課題となっていくでしょう。
 
 
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