これは『サイゴン、69』というタイトルの写真です。これに、あなたは何を感じますか。白人の家族が楽しそうに食事をしているレストランの前でベトナム人が道端に座っている。ちょっと60年代を勉強した人なら、アメリカとベトナムの戦争や人種関係を思い浮かべるのではないでしょうか。強いアメリカと虐げられたベトナム・・・・・・こんな図式が登場するかもしれません。
では、次の写真を見てください。
タイトルは『ホーチミン、ふたつのくつろぎ』。「おやっ?」と思うでしょうが、実はこれは同じ写真。僕が2001年にホーチミンで撮影したものです。一枚目はこれをモノクロ・セピア調に加工したもの。 ベトナム戦争はとうの昔の話 、こちらはアメリカ人もベトナム人もとても楽しそう(よく考えれば戦争中にアメリカ人家族がサイゴンで食事するなんてありえないのです)。
写真は現実を写し取るといわれますが、それは間違いです。写真は撮影者の意識・無意識の意図によって現実を切り取ったもの、さらには加工されたもの。だから、あなたが接するメディアは、まず誰かによって手がかけられているのだと考えることが必要です。
私の担当するメディア社会論では、こういった情報の伝わり方、そして伝え方について学んでいきます。
(現代社会学科 新井克弥)