交通網が発達し、医療も充実した現代社会において、
私たちは自分たちが生活上に困難を抱えるような身体的な機能障害を
負うリスクと常に隣り合わせでいることを忘れてしまいがちです。
交通事故やスポーツ事故、あるいは脳血管障害、喘息発作などによって
脳にダメージを受け、記憶障害や失語などのさまざまな症状が起こる
場合があります。
脳損傷によって生じるさまざまな症状は、日本でも最近「高次脳機能障害」
という名で知られるようになってきていますが、それを支える家族は、
脳損傷に対する理解の少なさに直面し、悩みを抱えてしまう傾向にあります。
脳損傷による高次脳機能障害をもつ人たちの地域生活支援を学びに、
オーストラリア・クイーンズランド州を訪ねました。
(ブリスベン市街)
(脳損傷者相談センター)
とてもモダンな街並みの並ぶ中心部のビルのなかに、相談センターはあります。
いつでも気軽に訪れることができるよう、下の階にはショッピングセンター、
上の階にはフィットネスクラブが入っています。
脳損傷を負った子ども専門の病院もあります。
(病院内脳損傷子どもセンター)
(病院内バーベキュー施設)
クイーンズランド州では、脳損傷を受けた後、周囲の人たちの理解を得ながら、
本人と家族が自信を持って生活していくことができるように支援することに
焦点を当てています。
スタッフはどんなに遠くても、飛行機や車を飛ばしてその人の暮らす地域まで
出かけていき、隣人や職場の人たちに、障害の特徴について説明をし、
協力が得られるよう働きかけをします。
子どもに対しては、学校へ出かけていって周囲の友達にはたらきかけることに
なります。
フットワークの軽さ、あくまでも本人の希望を中心とした援助計画の立て方、
素敵な笑顔に、ソーシャルワーカーの真骨頂を見た気がしました。
(現代社会学科 麦倉泰子)