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社会学の視点から注目される社会的企業の活動

教員コラム
2011.09.30
現代社会学科
浦野 和彦

リーマン・ショックや欧米の金融危機にみられるように、経済のグローバル化で景気の急速な変動はただちに社会の隅々にまで波及し、雇用労働の不安定化により特に若者にとっては就職自体今や容易でなくなりつつあります。日本では、3月11日に発生した東日本大震災に伴う原発事故の放射能による環境汚染が、その実態が明らかになるにつれ、その広域的かつ長期的な破壊的影響の深刻さをあらためて再認識させ、エネルギー資源の調達を、海外に多く依存する石油さらには原子力等にも頼るかたちで推進してきた戦後日本の工業化による経済成長志向の、その意義が根底から問われようとしています。

一方、各国政府の規制緩和を支えに国際社会で影響力を強めるグローバル企業に対抗し、非政府組織(NGO)や共益・公益を追求する自発的で多様な社会的活動を行う結社や組織が現れ、これらの一部に労働や福祉の問題への取り組みを部分的に契約で委託し、そのための条件整備を行う新たな国家の役割も生まれています。なかでも社会学の視点から注目されるのは、労働市場から排除された人々の自律的な労働への再参入を支援し又は労働を創出したり、新たなサービスの創出や公的給付から排除された人々等への社会サービス・コミュニティケアサービスを対等なかたちで供給しようとする、社会的企業の活動です。

産業化による工業社会を展望しつつも、そこから派生する没落階層や貧困階層の労働や福祉の問題にも目を向け、新たな社会秩序の回復を志向していた社会学の形成期には、生物有機体のような秩序を持つ社会の建設が志向され、そのための社会の理論的な青写真の作成(A.コントらによる)のみならず、実態調査を踏まえ社会を改良していく社会的事業の活動も展開されました(F.ル・プレーらの影響を受けた人々による)。今日の社会的企業は、かつての社会的事業に代わるものなのか、社会学的考察を進めているところです。


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