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ゼミ報告:『高齢者のクレーマー』

教員コラム
2018.10.12
現代社会学科
副田あけみ

 関東学院大学の社会学部では、毎年、3年生が中心となり、秋にゼミ報告会を開催します。私のゼミでは、4月半ばごろからゼミ報告会に向けて、みなで何を調べるか話し合いをします。まず、メンバーがそれぞれ関心をもっている事柄について調べて発表し、その報告内容について質疑応答を繰り返します。そして徐々に、ゼミ全体で深堀をしていくテーマを決めていきます。その後は、そのテーマについて文献を読む、資料を集める、アンケート調査やインタビュー調査を行うなど、多くの作業をみなで分担して実施します。
 
 ゼミ報告会が近づくと、それまでやってきたものを整理し、ゼミ報告用のプレゼンテーション資料を作成します。イラストや図表、写真なども入れて、わかりやすく、ゼミ報告会に参加する他のゼミ生や、来年度入るゼミを検討している2年生たちに関心をもって聞いてもらえるよう工夫します。
 
 これまで私のゼミの学生さんが報告したテーマには、以下のようなものがあります。なんとなく内容を想像していただけるでしょうか?
 
『君はしっているか!? ~エイジズム~』
『終活』
『高齢者と犯罪』
『高齢者の就労』
『高齢者の生きがいと健康』
『高齢者のクレーマー!?』
 
 『高齢者のクレーマー!?』では、高齢者の「理不尽なクレーム」について、関東学院大学の学生(102名)にアンケート調査を実施しています。「理不尽なクレーム」とは、十分な説明や正当な謝罪などを要求する「一般的なクレーム」とは異なり、モノや金銭を要求したり、言いがかりをしてくるなどの行為、とゼミ生たちは文献・資料に基づいて定義づけました。
 
 最終的にこのテーマになったのは、ゼミ生の中に理不尽なクレームを受けた学生がいて、その話をしたことをきっかけに、中高年という分別があるはずの大人がなぜそういうことをするのか、自分のほうが長く生きていて偉いという考えをもっているからだろうか、それとも物忘れや認知症が原因なのではないか、いや、「お客様は神様」という社会の風潮が影響しているのではないか、といった議論がゼミ内で起きた結果です。
 
 アンケート結果によると、対象になった学生の58%がアルバイト中にクレームを受けた経験をもっていました。クレームを言ってきた人の64%は男性で、50歳代から70歳代以上までの年齢層で、クレームをした人全体の78%を占めていました。
 
 クレームを受けた学生は、平均して1.5件の「理不尽なクレーム」を受けていました。中でも多かったのは、「非がないのに怒鳴られた」「嫌味を言われた」「間違えたことを怒鳴られた」などです。さすがに「暴力を受けた」学生はいませんでしたが、「モノ・金銭等を要求された」学生は3人いました。
 
 「理不尽なクレーム」はどうして起きると思うかという問いには、「プライドが高いから」という回答がもっとも多く、「高齢者の孤立」や「情報不足」からという回答も少なくありませんでした。また、学生たちの73%は、高齢者のクレーマーは増えていると思う、と回答していました。
 
 これらの結果から、ゼミ生たちは以下のような結論を出しました。
SNS等による情報社会に対応できないことによって、中高年は、自分のまちがいや失敗などによるプライドの傷つき体験が多くなる一方、老化に伴い気が短くなったり、物忘れによるストレス、認知症等によって感情コントロールが次第に困難になってくる。こうしたことから、今後も、中高年による「理不尽なクレーム」は増えていくのではないか。
 
 ゼミ報告会までの時間が足りず、個人主義社会、競争主義社会、市場主義社会、格差社会等がもたらす、社会全体の経済的・精神的・社会的ゆとりのなさといったことや、中高年に対応する若者たちの態度に問題はなかったのか、といった点についての考察までに至らなかったのは少し残念でしたが、聞いている2年生たちはよくわかる、といったふうでした。
 
 みなさんは、こうした結果を、どうお感じになりますか。

 
 
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