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進化社会学

わたしたちはどこから来て、
どこへ行くのか
MIHARA TAKESHI
三原 武司
担当科目
社会学概論、社会学史、社会学理論の応用 他
今、もっとも関心がある研究テーマは?
私は、「進化社会学」とよばれる、日本ではまだ新しい領域を研究しています。進化論や生命科学などの生物学的な「理系」と、社会学的な「文系」が結びついた、いわゆる「文理融合型」の領域です。これまで生物学と社会学は、互いの領域にあまり踏み込んでいませんでした。とくに社会学が生物学的な遺伝子などをあつかうのは、優生学的な観点からもタブー視されてきました。ところが、20世紀末から英語圏を中心に生物学の研究者たちが、歴史や文化や宗教など社会的な論点をあつかうようになり、それを受けて社会学の領域でも生物学が論じられ、それぞれの領域が互いに影響をあたえあう流れが起こりはじめました。私自身、10代のころは理系が苦手でしたが、この「文理融合」の動向を海外の文献から知り、興味を持ったのが研究のはじまりです。そのなかで、今もっとも関心を持っているテーマは、「なぜ人間は、他の生物と異なり、遺伝的にほとんど変化しないまま行動を大きく変化させることができるのか」というものです。
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その研究における醍醐味や、やりがいは?
地球の長い歴史のなかで、私たちホモサピエンスが出現したのは約20~30万年前とされます。そのほとんどを狩猟採集民として暮らしてきました。ところが1万年前くらいから急に行動が変化して定住し農業がはじまり、数千年前に文明がうまれ、数百年前には工業がはじまり、近年のグローバル化にいたります。このように生物のなかで人間だけが加速度的な行動の変化を引き起こしました。生物学的には、世代をこえて文化が積み重なった「累積的文化進化」によるものといわれています。ここに私は、社会学でいう「再帰性」が深くかかわっていると考えます。これは、自分で自分の行為や社会状況をモニタリングしながら振る舞いを変え、それを日常的に繰り返すことで社会的な変化が引き起こされると同時にその変化が行為者に取り込まれるという自己循環の理論です。他方で、文化が遺伝子に影響をあたえたとされる事例もあります。たとえば、私たち哺乳類は成長するにつれてラクトース(乳糖)を分解できなくなるため母乳や牛乳を飲めなくなります。しかし、酪農が早くはじまったヨーロッパではほとんどの人が牛乳を飲めるようになりました。近年の研究では酪農という文化と飢饉や感染症などがあいまって遺伝傾向が変わったと考えられています。また、人間は農業や工業そして都市の形成によって環境をつくり変えています。動物でいえば「巣づくり」のような生態系のなかでの活動にあたりますが、生物の活動が環境を改変し次世代の進化に影響をあたえる自己循環のことをニッチ構築といいます。進化論の展開は、人間の社会行動をあつかう社会学と結びつく発想が多岐にわたり、研究への興味が尽きません。
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ご自身の研究領域で、どのように社会をデザインしますか?
現在の人類は、かつてないほどの人口を養うことができるようになり絶対的貧困も減少してきました。1980年前後では約40億人のうち半数近くの人々が極度の貧困のなかにいましたが、現在は80億人以上に増えたにもかかわらずその割合は10%を切るまでになっています。発展途上国での乳幼児の死亡率が下がり、教育水準の上昇とともに識字率が上がり、虐待や暴力などの死亡率が減り、世界中での人権意識も高まってきました。人類の文化進化の結果、豊かになっているということですが、他方でその活動は地球環境に影響をおよぼしています。また世界中で長寿化が進んだ一方で、生活習慣病やアレルギー疾患などミスマッチ病によって現代人は新たな苦しみを背負うことにもなりました。20世紀末からは情報化が進展し、近年ではAIの研究が進むなど、今もなお人類はさらなる大きな変化の波を迎えています。そのなかで理系と文系を統合しながら、MDGsからSDGsへいたる取り組みを促進していくことはもちろんですが、鍵になるのは国際社会の協調です。この長い進化の歴史において、今ほど大規模な国際社会の協力が必要な時代はありません。それが「現生人類」の課題であると思っています。
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