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歴史社会学

身のまわりの「あたりまえ」の
成り立ちから現代を考える
YAZAKI CHIKA
矢﨑 千華
担当科目
歴史社会学、ナラティヴ研究法 他
今、もっとも関心がある研究テーマは?
「物語」から社会を読み解いていく
私たちは自分のことを人に伝えようとするとき、多くは「ストーリー仕立て」で話します。それは現代ではあたりまえのことですが、それではいつから私たちは自身の「物語」を語ったり、書いたりするようになったのでしょうか。古くは『源氏物語』や『竹取物語』などに「物語」の形式はありましたが、主語は「私」ではありませんでした。そのことに興味を持ったのは大学院生時代です。たまたま研究室にあった雑誌『思想の科学』のバックナンバーを開くと、そこに明治時代の「身の上相談特集」がありました。その内容は病気や夫婦のケンカ、好きな人と結婚できないことなどで、「いつの時代も悩みは同じなんだな」と思いました。けれど、何かが違う。資料を集めて気づいたのは、自分が主語ではないことでした。当時は現代文と古文の過渡期で、自身を表現する「ことば」も乏しかったように見えます。そのように「物語」から社会を読み解いていくのが私の研究です。
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その研究における醍醐味や、やりがいは?
社会は「共同性」によって維持されている
「私の物語」が革新的に進んだのは明治30 年代後半です。小学校の授業料が無料になり、女子児童の就学率も上がり、女学校などもできて、多くの人の「読む力」「書く力」が向上しました。40 年代からは、今で言うSNSのように雑誌の流通量も急激に増加しました。その歴史にふれると、現代までの教育に感謝せずにはいられません。今、学生たちに「なんでLINE ができると思う?」と聞くと、みんな「スマホがあるから」と答えますが、「違うよ、文字が読めるからだよ」と。今ではあたりまえのことも、かつてはそうじゃなかった。「あたりまえ」は常にアップデートされるのです。昔はスマホがないだけでなく、文字を読み書きできる人自体が限られていました。つまり、LINE のような文字を介したコミュニケーションが難しいこともあったのです。「スマホがあって便利だな」の背景には、多くの人が読み書きできるようになるまでの歴史があります。このように、その歴史に「ありがとう」と感じられることが研究の醍醐味です。
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ご自身の研究領域で、どのように社会をデザインしますか?
「私の物語」は誰かの物語とつながる
身の上相談に話を戻すと、新聞などに悩みを投稿するというのは「私の悩みは正当なのか。みんなも同じように悩んでいるのか」、つまりは「この悩みを抱えている私の存在は大丈夫なのか」という社会との交渉なんですね。それは、今のSNSと変わらないように思います。
現代は物語社会です。例えば、Twitterで考えると、180文字でありえないくらいの物語が刻一刻とリアルタイムで生産されている。その「私の物語」もどんどん増えて、他者の物語と重なるところが見えにくくなっているのかもしれません。それぞれに悩みも苦しみもあって「わかり合えるはずがない」と思っているかもしれない。けれども歴史的に見れば、私たちは共同性によってつながっている社会の成員であり、社会という物語の参加者であることがよりくっきり見えてきます。そして、この社会自体も結末の見えない物語の途中です。それぞれ全員が登場人物なので結末はわからないけれど、「私の物語」は誰かの物語とつながり、互いに作用しながらどんなストーリーを描いていくのか。一緒に考えていきましょう。
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