教員紹介

社会学部教員コラム vol.55

2013.03.16 現代社会学科 新井 克弥

ウォルトが生きるロス・ディズニーランド〜日米ディズニーランド比較④

まだまだ、ある

 
ロス・ディズニーランドに今も残るウォルトの精神=ディズニーの文化について検証している。前回までは鉄道と潜水艦二つのアトラクションの歴史の継承性について紹介してきた。

 

こういった「ウォルトの遺産」は他にも細かいところに見つけることが可能だ。たとえばフロンティアランドにあるBig Thunder Ranchでは、本物の山羊と牛が飼われている。 またメインストリートUSA(日本のワールドバザールに該当する。ただしキャノピー=屋根はない)のHorse Drawn Streetcarsも馬が引っ張っている。 ディズニーランドの基本的なコンセプトは「全てを制御可能にすること」。原則、コントロールが難しい動物は置かない(だから、パレードに本物の動物は出てこない)。ところが、ここには動物がいて、子どもたちがこれに触れたり、前述の馬車に乗ることができる。なぜか?実はこれもまたウォルトが開園時にこういった自然と触れられるアトラクションを用意したからだ(もっとも、今や動物たちが動き回れるエリアはごく僅かになってしまってはいるのだけれど。ちなみに、このコンセプトを大々的に展開したのがフロリダ・ウォルトディズニーワールドのアニマル・キングダム内にあるConservation Stationだ)。つまり、設けているのは、これもウォルトの世界を守ろうとする配慮からだろう。自然で制御不能VS人工的で制御可能、ウォルトの考えの矛盾するものを共存させているわけだ。まあ、なんとも徹底している。

Big Thunder Ranchでは、ゲストは本物の牛や山羊に触れることができる。

 

今回、この矛盾が露呈する場面に遭遇することができた。馬が引っ張るアトラクション・Horse Drawn StreetcarsがメインストリートUSAからプラザの降車場にやって来て、ゲストの入れ替えをやっているときのこと。突然、馬が暴れはじめたのだ。すると、馬担当のキャストが登場し、一生懸命馬をあやすとともに、乗車したゲストに謝罪して、全員を下車させ、馬だけを車から話して連れ去ったのだ。

 

Horse Drawn Streetcars。MainStreet USAを本物の馬車が走る!

 

 

ウォルトが住むところ

 
さて、最後にウォルトの精神が息づいている、とても小さな、それでいて最も重要なもの、ディズニーランドの中でウォルトの存在を象徴するものを紹介したい。それは下の写真。Fire Station、つまり消防署だ。エントランスをくぐり抜けると向かってすぐ左側にある。

 

ゲート入ってすぐ左にあるFire Station。ウォルトはゲストに知られることなく、この二階で寝泊まりしていた。

 

これは実際の消防署でもないしアトラクションでもない、ただのアトモスフィア。しかし、この建物が何にも使われることなくここにずっと置かれていることに、実は大きな意義がある。

 

問題はこの二階だ。ここにはリビングルームがある。だが、一般のゲストがここに入ることは残念ながらできない。じゃ、なぜ、こんなものがあるのか?

 

実は、これはウォルトがディズニーランドにやって来たときに宿泊する施設だったのだ。ウォルトは家族や孫を連れて、ここを頻繁に訪れた。そして窓越しにゲストの様子を見ていたのである。また、ここに寝泊まりし、朝はキャストが来るよりも早くパーク内を回って新しいアイデアを構想していた。もちろん、当時は、ここにウォルトが頻繁に訪れていたなんてことをゲストは知るよしもなかったのだけれど。

 

(YouTubeのURL)
http://www.youtube.com/watch?v=TEZvutV8-FI&feature=player_embedded

Fire Station二階内部のビデオ

 
こうやってロス・ディズニーランドはウォルトの精神を受け継いでいる。ただし、それはただ単にウォルトの考えどおりにではなく、その精神性を継承しながら今日的意義を加えることによって。つまり、古くなったからといって、ただ別のものに置き換えるのではなく、さながらペンキの再塗装のように、その上に新しいものを塗り重ねていくというやり方で。ここにあるのはまさにウォルトという文化の「重層性」なのだ。

 

そしてこのディズニーランドは年々そこにしわを刻んでいき、あるいは黒光りしていき、ますます文化としてのいぶし銀の光を放ちはじめるのである。

 

ファンタジーランドの西奥に残っているSkywayの乗り場。

かつてこのロープウエイはトゥモウロウランドまで伸びていた。

 

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