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『むかしMattoの町があった』

教員コラム
2017.07.21
現代社会学科
麦倉 泰子

 先日、担当している「障害と社会」の授業のなかでイタリアの精神医療改革のあゆみを描いた『むかしMattoの町があった』という映画を鑑賞しました。この映画は、1960年代以降のイタリアにおいて、精神科医フランコ・バザーリアを中心とした人々が、収容型の精神病院を閉鎖し、地域における精神保健医療制度を確立しようする苦闘の様子を描いたものです。
 
 2010年にイタリア国営放送で放映された際には、2夜連続で190分を超える大作であったにもかかわらず、視聴率がいずれの回にも20%を超えたというのだから驚きです。イタリアの人たちが、バザーリアたちが成し遂げた人間性の復権ともいうべきこの改革をいかに誇りに思っているのかをよく表していると思われます。
 
 全編で190分を超える大作であるため、90分間の授業の中では、冒頭精神病院の中での様子から、社会からの隔離の象徴である病院を囲っていたフェンスが、入所していた人たちと、支援者たちの手によって倒され、皆が抱き合って喜びを爆発させるシーンまでしか見ることができなかったのですが、それでも学生の皆さんには強烈な印象を残したようです。
 
 特に、閉鎖型の精神病院のなかで行われていた長期にわたる身体的拘束や、「暴れだした患者」(というよりも、病院の管理のルールに従わない患者)に対して行われた電気ショック療法といったような凄惨を極める「処遇」のシーンでは、教室の中の空気が凍り付くのが感じられました。後から集めた感想には、「信じられない」「ひどすぎて涙が止まらなかった」「こんなことが実際に行われていたことをまったく知らなかった」といった言葉が多く書かれていました。また、「このあとどうなるのか、見てみたい」という声もたくさん聞かれました。実際、病院を閉鎖したからといってすぐに地域で暮らすことができるわけもありません。地域での無理解に立ち向かいながら、個別的な支援体制を作ろうとするなかで、バザーリアたちも身をすり減らしていきます。それでもあきらめず、イタリアのすべての精神病院の閉鎖を求める法律の制定に至るまでの道のりは、深い感動を呼び起こします。授業では口頭で説明することしかできませんでしたが、この部分こそぜひ見てほしいところです。
 
 『むかしMattoの町があった』のDVDは、現代書館から昨年9月に刊行された 『精神病院はいらない!:イタリア・バザーリア改革を達成させた愛弟子3人の証言』(大熊一夫編著)に付録として収録されています。
 
(※授業内での上映については旧「バザーリア映画を自主上映する180人のMattoの会」事務局から許諾を得ています。)
 
 
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