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石井光太講演会Ⅱ-子どもが空腹である、ということを考える

教員コラム
2016.12.22
現代社会学科
石川 時子

 今年度も人文科学研究所のご協力を頂き、社会福祉概論Ⅱの授業とあわせて講演会を開催しました。講師は昨年度も本学にお越しいただいた石井光太さんです。昨年度はアジアの「絶対貧困」(昨年度の大学のNEWSより)を中心にお話しいただきましたが、今年度は「孤児」(今年度の大学NEWSより)をテーマに、日本の戦後の浮浪児と、現代の家庭内の被虐待児についてお話いただきました。
 
 今回、お話しいただいたテーマは、石井氏の著作「浮浪児1945」が中心です。この書を読んだとき、私は唐突に亡き祖父の「昔話」を思い出しました。祖父は明治生まれだったので、厳密には太平洋戦争時には成人していたため、「浮浪児1945」の世代とは異なりますが、日露戦争、第一次世界大戦、そして太平洋戦争の影響を強く強く受けた世代でした。私は幼少期に何度も、祖父から「お腹を空かせた子ども時代」の話を聞いていましたが、自分は豊かに食べ物がある生活をしていたため、全くそれを思いやることはなく、聞き流していたように思います。戦後○年、終戦記念日、等、ニュースを見てはいましたが、どこかでそれを「昔話」のように、他人事として受け止めていました。
 
 「浮浪児1945」は、終戦直後に孤児となった子どもたちが上野の地下道で暮らし、ヤクザや娼婦らに拾われたり、施設に刈り込まれたりしながら生き延びていく事実を丹念に掘り起こしたルポです。子どもたちの生き様が、目の前に迫ってくるような濃い内容でした。お腹が空き、親に会えないことがどれだけ辛いことだったのか。当時の子どもが強いから生きてこられた、のではなく、選択肢がない中で生きることは誰しも辛いことだと、他者化して見ないようにしていた事実を、改めて感じさせられました。祖父も、辛かったのだ、と。
 
 私が授業の中で大切にしていることの一つに、「当事者の立場になって考える」ことがあります。大講義形式の授業は大学1~2年生が中心なので、貧困であることや、希望を諦めざるを得ない子どものことを、彼らにわずか数年前の「子ども時代」を想起してもらって考えてもらうようにしています。物乞いをしなければ餓死と隣り合わせであり、性暴力の被害に遭っても、生きなければならないことが、今回の講演でも強く印象に残った学生が多いようでした。アンケートやレポートには、「自分だったらどうしていいかわからない」「大切なことを知ったけれど、これから自分が何をしていいかわからない」という声も沢山ありました。私も、答えはありませんし、自分が何をすべきかを模索中です。
 
 「児童虐待」も「子どもの貧困」も、ここ数年で随分と知られた事実になりましたが、概要を知ると同時に、子どもがお腹が空くということ、愛されないということが、どれだけ辛いことなのか、痛みを感じようとする姿勢が大切だと思っています。
 
 
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