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ランカシャーの魔女たちLancashire Witches Four Hundreds

教員コラム
2012.11.16
現代社会学科
麦倉 泰子

2012年9月より、在外研究としてイギリスの障害者福祉の状況を学ぶためにイングランド北部に位置するランカスター大学に滞在しています。イギリスでは、1970年代からの長きにわたる障害のある当事者による運動によって、ここ15年ほどの間に自立生活を可能にするための大きな制度改革がいくつも行われてきました。キーワードは「選択」と「コントロール」です。一人一人が自分の人生を自分の望むようなかたちで送るために、直接的なサービスを選ぶだけではなく、自分の障害に見合った支援に必要な額と同等の現金を受け取り、自ら管理することも可能になっています。当然のことながら、受け取った現金が適切に運用されているのか、そのための支援はどうなっているのか、あるいは「障害に見合った支援に必要な額」を査定するときの基準は妥当であるのか等、批判も多く、賛否両論が入り混じる状況が続いています。

同時に、「公平であること」も現在のイギリスにおける社会サービスを考えるときの重要なキーワードです。特に、経済不況に見舞われているイギリスにおいては、緊縮財政政策のもと、いかに費用効果の高いサービスを実施するかもこれまでにないほど重要視されています。

いずれもイギリスという国の文脈を超えて普遍的な価値を持つ改革です。私の現在の主な研究課題は、このようなイギリスにおける改革を日本の国内の状況に沿うような形で適用するにはどうした良いのか、というものです。

 

在外研究期間に入ってから約2か月というところですので、もう少しまとまったところであらためて研究の報告をしたいと思います。今回は私が現在滞在しているランカスターという街の紹介をしたいと思います。

 

ランカスターはロンドンから列車で2時間30分ほど北上したところにある人口13万人ほどの都市です。街中には歴史のある建物も多く、イギリスの伝統的な地方都市の趣がありますが、大学がいくつかあるため若い留学生も多く生活しており、落ち着いた雰囲気のなかにも多様性と活気もある不思議な魅力を持つ街です。

 

 

さて、ランカスターでは現在、「Lancashire Witches Four Hundreds―ランカシャーの魔女400周年」というタイトルで、ランカシャー地方でかつて行われた魔女裁判を400年経った現在から振り返るという興味深いイベントが行われています。

 

面白いのは、このイベントが美術館などが単独で実施する企画ではなく、大学や市民団体、公共施設や映画館が協力してこのテーマに取り組んでいるところです。

 

 

写真にあるシティ・ミュージアムでは、400年前の魔女裁判がどのようなものであったのか、証言者となった少女の言葉の検証や、壁に塗り込められた子どもの靴、猫のミイラといった魔女信仰を示す物品の展示から考察が行われています。

 

「魔女」という疑いをかけられた人たちが収容され、約半数が有罪判決を受けたというランカスター城です。なんとつい最近まで現役の監獄として使用されていたというこの建物は、一見して得られる「優雅なお城」というイメージとは随分とかけ離れたものです。

夜の7時半から行われるガイドツアーでは、凄惨な魔女裁判の様子や、イギリス国教会とカトリックとの軋轢、その影響を受けて処刑された人々の様子などが90分かけてじっくりと語られます。この日の参加者は20名ほど。

「魔女」と名指された人たちの中に障害のある人たちが少なからず含まれていたことはよく語られます。大陸とイギリス国内では若干状況が違うことも今日の説明からわかりました。社会が「illness 病い」をどのように扱おうとしていたのかについての批判的なまなざし、またこのような魔女裁判が過去のものではなく、ナイジェリアでも現在進行している事象であるという考察には考えさせられるところが多々ありました。


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