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刑務所にいま何が起きているのか

教員コラム
2024.07.04
現代社会学科
鄭 煕聖

近年、増え続けている高齢受刑者の実態を調査したいと思い、20246月に府中刑務所を訪れました。府中刑務所の起源は1790年(寛政2年)に設立された石川島人足寄場にさかのぼります。その後、1924年(大正13年)に関東大震災の影響で府中に移転し、新たに建設されました。府中刑務所は、東京都府中市に位置し、敷地面積は262,187平方メートルで東京ドーム5.6個分の広さです。主に刑期10年未満の犯罪傾向が進んだ日本人受刑者や外国人受刑者、そして身体・精神疾患者を収容しています。職員は629名、収容定員は2,668名で、日本最大の刑務所です。

府中刑務所は20243月末現在、日本人受刑者1,190名と外国人受刑者350名を収容しています。収容状況をみると、日本人受刑者は、窃盗が38.8%で最も多く、次いで、覚せい剤等薬物33.6%、詐欺8.3%の順です。一方、外国人受刑者の場合、覚せい剤等薬物が57.1%と圧倒的に多く、強盗12.7%、窃盗10.2%、殺人6.5%であり、日本人受刑者との差が確認できます。外国人受刑者において、覚せい剤等薬物の占める割合が顕著に高い理由としては、外国人の場合は密輸が多いためだそうです。国籍別では、中国が19.2%と最も多く、ベトナム17.2%、メキシコ6.8%、マレーシア6.5%、アメリカ5.4%、タイ4.5%など50か国以上の外国人を収容しています。

刑務所の役割は大きく、収容の確保、作業の実施、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰の実現の3つが挙げられます。第一に、収容の確保は、自由刑の執行施設として、確実に身柄を刑事施設内に収容し、犯罪者を社会から隔離するための機能です。第二に、作業の実施は、受刑者の大幅を占める懲役受刑者に対して、刑法に定める所定の作業に従事させることを目指します。一方、令和76月の拘禁刑制度開始より、「懲らしめ」のために罰として刑務作業の義務を課す「懲役」を廃止し、受刑者の改善更生と社会復帰を目指す「拘禁刑」を創設することになりました。その背景としては、検挙人員に占める再犯者の割合が高い状態が続くことや、障がいを抱えていたり、高齢であるなどの様々な特性をもつ受刑者に作業を強要させるなど柔軟な処遇に困難を抱えるためです。第三に、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰の実現は、受刑者が善良な市民として社会復帰できるよう、様々な矯正処遇を行い、改善更生の意欲を喚起し、社会生活への適応能力を育成することです。

日本刑務所の1日平均収容人員の推移をみると、2012年に68,565名だったのが、2022年には43,166名にまで減少しました。府中刑務所も同様に、2012年に2,675名だったのが2022年には1,509名と大幅に減少しています。府中刑務所の高齢受刑者数だけをみると、2012年に355名だったのが、2022年に260名へと減少傾向にあるものの、2023年には301名と再び増加しました。そして高齢受刑者の占める割合は、2012年に13.5%だったのに対し、2023年には19.3%まで増加し、今後も増加していくと考えられます。

高齢受刑者が増え続けている背景には、いくつかの要因が考えられますが、まず、高齢化の進行が挙げられます。これに伴い、犯罪を犯す高齢者の数も増加してきています。なお、高齢者の孤立や困窮が原因となって犯罪に手を染めるケースも少なくありません。

高齢受刑者が増加しているなか、刑務所では医療と介護のニーズが高まり、様々な課題が顕在化しています。例えば、刑務所内に介護スタッフを養成し、介護設備の拡充の必要性が指摘されており、またケアが必要な高齢受刑者における夜間の見守りや緊急時の対応などの負担が増えている声も耳にしました。刑期を終えた後の社会復帰が困難なケースもあり、この場合、再犯リスクが高いため、就労支援や住居の確保も重要な課題だそうです。

高齢受刑者の増加は、府中刑務所だけでなく、社会全体にとって重要な課題となっています。刑務所内での医療と介護の充実、社会復帰支援の強化、そして地域社会との連携がますます求められるなか、令和76月に開始される拘禁刑制度が、今後の高齢受刑者の社会復帰支援と再犯防止にどのような影響を及ぼすかに注目したいと思います。


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