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一冊の本–『フランス革命小史』–

教員コラム
2016.05.27
現代社会学科
橋本 和孝

 私は、1969年4月大学に入学しました。大学の受験勉強を始めるまで、まともに勉強をしたことがありませんでした。野球に打ち込んでいたからです。ラジオ講座やオールナイト・ニッポンを聞きながら、受験勉強を始めると、勉強が面白いことを知りました。ただしあまり真面目な高校3年生でもなかったです。時々、風俗街ではなかった時代の新宿歌舞伎町や新宿御苑を徘徊したからです。
 
 大学は、大学紛争の真っ盛りでした。ベトナム反戦と沖縄返還が大きな争点だったと思います。新宿西口広場には、毎週べ平連(ベトナムに平和を!市民連合)の若者が、反戦フォークソングを歌っていて、黒山の人だかりでした。外濠公園の夕方のふじ色に染まった空の色を思い出します。あれは光化学スモッグの影響だったのでしょう。森山良子が大学でコンサートを行い、参加したこともありました。
 
 大学生になったのだから勉強しようと思い、とにかく勉強しました。それから、アルバイトで、新宿小田急ハルクで掃除夫にもなりました。デパートの裏側を垣間見た気がします。夏休みには、中村屋笹塚工場で羊羹づくりのバイトをしました。9時から6時までだったでしょうか、日給1200円の結構きつい仕事でした。それでも、バイト仲間の友達もでき、会社の納涼祭や女子寮のパーティなど楽しいひと時もありました。大学4年間は、勉強とアルバイトに追われました。自宅生ではあったけれども、小遣いは自分で稼いでいました。またずいぶんと振られたことを思い出します。ただしノンポリ(ノン・ポリティックス)であった訳ではありません。
 
 大学時代に読んだ本で、もっとも衝撃的だった本は、河野健二氏の『フランス革命小史』岩波新書(1959年)です。オイルショック前で、岩波新書が130円の時代です。昭和44年5月10日と本の最終ページにメモがあります。読みだした日か読了の日かはわかりませんが。
 
フランス革命小史(400)
 
 フランス革命(1789年)というのは、自由・平等・友愛(博愛)を掲げ、近代社会としての資本主義を切り拓くエポック・メーキングになった歴史的出来事です。それは戦後日本社会の基本である市民的自由をもたらすことに繋がった革命でありました。ルイ16世が断頭台に消えて行きました。問題はそこからです。私が衝撃を受けたのは、「バブーフの陰謀」でした。記憶を頼りにすれば「バブーフの陰謀」とは、フランス革命 に基づく近代市民社会の転覆を目指す、極悪人として高校教科書には描かれていたはずです。あるいは、私が単にそう思っていただけかも知れません。
 
本の記述(400)
『フランス革命小史』92~93ページ
 
 しかし、河野健二氏の記述は違っていました。バブーフたちは、「武力蜂起によって独裁権力をうちたてる道をえらんだ。かれらには、これによって革命を最終的に完成し、事実上の平等の社会を実現しようとした。かれらによれば、『フランス革命は、はるかに大きな、はるかに荘厳な、最終的ないま一つの革命のさきがけをなすものにすぎない。』こうして、かれらはおどろくほど正確に社会主義革命を予言した」(176ページ)と書かれていました。
 
 ソビエト連邦や東欧が崩壊する前の、社会主義社会が「人類の希望」だった時代のことではありますが、ここには「バブーフの陰謀」が、悪しき陰謀ではなくて、未来社会を予想したものであることが記述されていたのです。私は、この時、歴史の見方というものは、一つではなく、多様な見方があることを知ったのです。
 
マリーアントワネット(400)
 写真はルイ16世のお妃マリー・アントワネット(『王妃マリー・アントワネット』より)
 
 
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