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ダイアローグ・イン・ザ・ダーク体験記

教員コラム
2012.01.20
現代社会学科
麦倉 泰子

私たちのゼミナールでは、「障がいのある人たちの暮らしがよりよいものになるには何が必要か」について学んでいます。そもそも「障がい者」という言葉は、誰のことを指すのか。「障がい」のイメージとはどのような過程で作られていくのか。「障がいのある人」と「障がいのない人」が一緒に生きることを妨げる壁とはどのようなものか。そして、その壁が崩れたらどんな世界が見えるのか。私たちのゼミで日々話し合われているのはこんな話題です。言葉にすると簡単ですが、真剣に取り組むとなると、日常生活の中見過ごしてしまっているあらゆる「常識のかたち」を、いちから問い直す作業が必要となります。知識や人間関係、建物の構造、それを生み出す人間観等々、奥深くて、さまざまな可能性を感じることができる魅力的なテーマです。

先日、このテーマをより深く知るために、ゼミナールのメンバーで「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」というとても面白いイベントに参加してきました。

「暗闇の中での対話」と題されたこのイベントは、ドイツで哲学者ハイネッケ博士によって発案されたものです。普段、視覚から多くの情報を得ている人たちが、光を遮断された環境のなかではどのような経験をするのか。周りの人の存在をどうやって知り、コミュニケーションするのか。斬新なアイデアによるこの試みはヨーロッパで大きな話題となりました。
 現在日本でも渋谷区神宮前に常設の会場が設置されており、多くの人が体験することができるようになっています。この看板の隣の階段を下ると、地下にその不思議な暗闇の世界が待っています。

 

 

このイベントの特筆すべき点は、暗闇の中をアテンドしてくれるのが視覚障がいを持つ当事者の方たちだということです。

柔らかな光の溢れる落ち着いた雰囲気のロビーから移動して、徐々に光が落とされ、いよいよ暗闇の世界へ入っていきます。いくら目を凝らしても何も見えないという感覚は、おそらく多くの人にとって初めてのものではないでしょうか。漆黒の闇を目の前にして、最初は一歩踏み出すのがとても恐ろしく感じられます。

私たちが恐る恐る団子状になって進む間に、「暗闇のプロ」であるアテンドの方は、スイスイと歩いている様子です。そして、的確に、暗闇を楽しむコツを教えてくれます。落ち葉を踏む感覚や、川のせせらぎの音、隣の人の存在を確認する手の感触…だんだんと私たちの感覚が変わってくるのがわかります。

最後にバーに辿り着くころには、すっかり恐怖心は消え、代わりに不思議な安心感が満ちてきます。この暗闇のなかで皆とずっと話をしていたいような気持です。

 

終了後に、手探りで作ったもの(この日は粘土

細工でした)を確認しています。意外とみんな

手が器用で、横浜名物のシュウマイなどがかな

りリアルに作られています。

アテンドしてくださったとおるさん、こずえさ

ん、ありがとうございました。

 

 

今回の「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」の体験は、冒頭に述べた「常識のかたち」を変える大きな力を持っていたようです。参加した学生たちは帰る道すがら自分たちがいま経験した出来事の意味について熱心に話し合っていました。ちなみにこの日は合宿中で、朝9時から夕方の4時までみっちり研究発表を行っていました。体験が終わり、会場の外に出ると夜8時ごろでしたが、夜でも街の光はまだまだ明るく、逆に違和感を感じたのでした。


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