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「使い方」の知識と「仕組み」の知識

教員コラム
2010.10.21
現代社会学科
湯浅 陽一

「今の勉強が何の役に立つのかわからない」と学生に言われることがあります。私が所属している現代社会学科での学習内容には、社会に出てすぐに使えそうな知識もありますが、役に立ちそうにないと思われるような知識も少なくありません。ただし私は、社会学の中に溢れている「役に立ちそうにない」知識は、現代社会を生きていくうえで非常に重要であると考えています。

 

知識は「使い方」や「やり方」についての知識と、「仕組み」に関する知識の2つに分けられます。例えば高校生のみなさんは、ほとんどの人が携帯電話で電話をし、メールを送ることができるでしょう。携帯電話の「使い方」については、非常によく知っていると思います。しかし、どうして携帯電話で電話ができるのか、メールが送れるのかを知っている人はごく少数でしょう。携帯電話の「使い方」についての知識は豊富に持っていますが、「仕組み」に関する知識はほとんど持っていないわけです。

 

携帯電話の使い方についての説明を受ければ、それで新しいことができるようになるのですから、役に立つという実感があるでしょう。しかし携帯電話の仕組みに関する話を聞いても、よくわからないし、すぐに使えそうなわけでもないからあまり面白くない、と感じるかもしれません。しかし携帯電話が壊れた時などは、仕組みに関する知識がないと直すことができません。

 

↑ 昔使っていた携帯電話の写真。壊れても、専門の人が直してくれます。

 

社会に関する知識についても、同じようなことが言えます。仕事上の書類はこう書けばいい、こうやればお金を稼ぐことができる、といった知識は使い方ややり方についてのものです。もちろん、これは重要な知識です。しかし、私たちが今の社会を生き抜いていこうとすると、仕組みについての知識を持っておくことが不可欠です。

 

現代社会は、非常に変化の激しい時代だと言われます。これはつまり、ある時点で得た使い方ややり方に関する知識が、しばらくすると通用しなくなることを意味します。江戸時代のような変化の少ない時代に、あるお店の子どもとして生まれたのであれば、両親の仕事のやり方を覚えて後を継げば、それで一生のあいだ仕事ができたでしょう。しかし今の時代では、ある商店の子どもとして生まれても、周囲にスーパーなどの大型店がたくさんできるので、両親の仕事のやり方を真似て覚えるだけでは、お店を維持できません。社会の変化により、以前は通用したやり方に関する知識が通用しなくなるのです。

 

このような状況の中でお店を維持する、あるいは自分の生活を守るためには、社会の中でどのような変化が生じているのかを理解し、それをふまえて対策を講じることが求められます。その際、社会の仕組みに関する知識は不可欠です。社会の変化は社会の仕組みの変化だからです。この知識がないままにお店や生活を守る方法を考えることは、仕組みに関する知識がないまま携帯電話を修理しようとするようなものですから、失敗する可能性が高くなります。

 

 

↑最新型の携帯電話。中身も大きく変わっていると思われます。

 

社会学の勉強は、こうした社会の仕組みに関する知識に溢れています。社会の仕組みに関する勉強をする機会は、社会に出て働き始めるとほとんどありません。学生のみなさんにはぜひ、よい勉強をして欲しいと願っています。

 

(現代社会学科 湯浅陽一)


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